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18日目〜紳士とやさぐれとヒーローと〜
なんの前置きもなく湧き上がった火柱。
だがやさぐれは無感動にその正体を看破する。
ファイヤーウォール。
どこから放たれたものかは分からないが、とにかく第三者の救援と見るのが妥当のようだ。
しかしだとするとなぜファイヤーウォール放つ、恐らくは魔術師は姿を見せないのだろう。
突然の火柱にドッペルゲンガーご一行、歩を止め辺りを警戒している。
紳士はかまえを解き、上空━林立する枯れ木の頂上を探っている様子である。
「このオーラ・・・ コルトさん、どうやら力強い仲間が集ってくれたようですな」
「仲間? 集う、ってことは複数人いるんですか?」
「左様、気配からして恐らく5人ほど。みな高LVでしょう」
お知り合いですか、そうやさぐれが重ねて問おうとするを同時に。
天よりの声が高らかに、そして誇大大げさに自己紹介をはじめたのだった。
だがやさぐれは無感動にその正体を看破する。
ファイヤーウォール。
どこから放たれたものかは分からないが、とにかく第三者の救援と見るのが妥当のようだ。
しかしだとするとなぜファイヤーウォール放つ、恐らくは魔術師は姿を見せないのだろう。
突然の火柱にドッペルゲンガーご一行、歩を止め辺りを警戒している。
紳士はかまえを解き、上空━林立する枯れ木の頂上を探っている様子である。
「このオーラ・・・ コルトさん、どうやら力強い仲間が集ってくれたようですな」
「仲間? 集う、ってことは複数人いるんですか?」
「左様、気配からして恐らく5人ほど。みな高LVでしょう」
お知り合いですか、そうやさぐれが重ねて問おうとするを同時に。
天よりの声が高らかに、そして誇大大げさに自己紹介をはじめたのだった。
17日目〜紳士とやさぐれ〜
順調な狩りは続く。
退魔師とその用心棒は襲い迫る敵を次々と駆逐しつつ、ダンジョンの奥へ、また一歩奥へと歩を進めていた。
道中特に変ずることなにもなし。
至ッテ之平穏無事也
天津かフェイヨン風な字面で架空の報告日誌を読み上げつつ、2人は少しひらけた場所に到達した。
枯れ木も山の賑わいの言葉どおり、枯れ木がそこらに、まさに「林立」している。
「賑わい」は言うまでもなく、例の黄色い声たちだ。
前を歩く紳士はさきほどから微笑みを絶やさず良い姿勢で歩いている。手を大きく振り、いわゆるウォーキングの体制なのだが、時折ふところに手をやってはハッと何かに気づき、過去のトラウマと対峙するかのごとく一瞬何かを耐えるような顔になったかと思えば手を引っ込める、そんな行動を繰り返していた。
ふところに手をいれる、そのことについて何か過去にトラウマでもあるのかもしれない。
そういえば、当初の自己紹介の時に違和感があった。
「はっはっは、わたしのことは空巡る自由なバード、鳥とでも呼んでくれたまえ」
臨公広場のはずれ、ワープポータル詠唱前に軽い自己紹介をした。
バードか鳥かどっちなんだ、そもそも語呂が悪くて呼びづらい。
口にはしないがやさぐれの暗い目がそう語っている。
「・・・私はコルトレール・ミュージック。ながいのでコルトと呼んでください」
小さく高い声に、とたん、紳士の顔が青くなる。笑顔のまま。凍りついたというアレがぴったりである。
「そそそそうですか。Coltさんですね。よろしく、よろしく」
「いや、微妙にイントネーションおかしいですよそれ。コルトって韻は踏まないでいいです。その呼ばれ方はあまり好きじゃないのです」
「おおそれは失礼。過去似たような名の君と組んだことがあってね。そのときを思い出してしまったよ。ハ、ハ、ハ・・・」
そう言いながら、ようやく回復してきた顔色をふところから取り出したハンケチでぬぐう。
内々にある確信をいだきながらワープポータルを唱えるやさぐれ。
会ってるな、彼は。
どうか行く先でご対面となりませんように。
ゲフェンへ続く青い光の柱を生成しつつ彼女はそう呟いた。
そして現在、恐れていた事態にはまだ立ち至っていない。
もっとも、紳士言う「似たような名前の君」とやさぐれが脳裏に浮かべる人物は同一だとすれば、彼女は世界中の狩場を観光よろしく巡っている。
ここゲフェンダンジョンにも到来の可能性はないでもない。
考えても詮無いこと、と新たに現れるデビルチにMEの連打で歓待を告げる。
紳士は相変わらず後頭部に赤いモンスターをぶら下げたままの戦いだ。
あれはひょっとしてペットなのだろうか。
ー突然、紳士が顔を上げた。頭のハンターフライを右手ではがし左手で懐にしまう。
「・・・ふむ、場の気配が変わった。コルトさん、そろそろ敵首魁の登場らしいですよ。優雅に一戦、交えてみますかな」
もぞもぞとタンクトップの胸部あたりが不気味にうごめく紳士が不適に笑った。
「ドッペルゲンガー ですか」
まず胸元をどうにかした方がいいと思いながらやさぐれが問う。
「いかにも。どうしますかな? クライアントのご指示を」
右手を胸にあて背後にひき、ふざけた様に優雅なお辞儀をする。
「殲滅」
小さく、しかしきっぱりと告げた。
にやりと口元とヒゲをゆがませる紳士。
では・・・ と気功を発動した。
「ジェントル! 爆裂波動!」
全身みなぎるオーラをまとい、ここに臨戦態勢完了である。
ジェントルシップについてはもはや何も言うまいと、やさぐれも装備を対ボス仕様に変更完了。
背中合わせで広場中央に陣取る2人。
準備は万端、心構えもOK。
ボスを迎えるにあたってこれ以上ないシチュエーション。
そんな中、紳士の予言どおり、ソレは現れた。
広場中央のコンビからすこし外れたがけっぷち。
従者に無限と現れるナイトメア-悪夢-を連れ、ドッペルゲンガーが降り立った。
即座、ME詠唱に入るやさぐれと、彼女の前に立ち敵を迎え撃とうと構える紳士。
タンクトップの胸部は相変わらずもぞもぞと動いており、いまいち緊迫感がない。
紳士からDOPまではおよそ10メートルもあるだろうか。
だが向こうがこちらに気づけば2秒と待たずに間合いを詰めてくるだろう。
そしてー 一匹のナイトメアがこちらに意識を向ける。
「くる」
「きますよ」
それぞれがそれぞれに一言。
内心の恐怖を押し殺し、覚悟を決めたそのとき。
中央のコンビと広場端、がけっぷちにいるどっぺるご一行の間に、赤い火柱が炸裂したのだった。
退魔師とその用心棒は襲い迫る敵を次々と駆逐しつつ、ダンジョンの奥へ、また一歩奥へと歩を進めていた。
道中特に変ずることなにもなし。
至ッテ之平穏無事也
天津かフェイヨン風な字面で架空の報告日誌を読み上げつつ、2人は少しひらけた場所に到達した。
枯れ木も山の賑わいの言葉どおり、枯れ木がそこらに、まさに「林立」している。
「賑わい」は言うまでもなく、例の黄色い声たちだ。
前を歩く紳士はさきほどから微笑みを絶やさず良い姿勢で歩いている。手を大きく振り、いわゆるウォーキングの体制なのだが、時折ふところに手をやってはハッと何かに気づき、過去のトラウマと対峙するかのごとく一瞬何かを耐えるような顔になったかと思えば手を引っ込める、そんな行動を繰り返していた。
ふところに手をいれる、そのことについて何か過去にトラウマでもあるのかもしれない。
そういえば、当初の自己紹介の時に違和感があった。
「はっはっは、わたしのことは空巡る自由なバード、鳥とでも呼んでくれたまえ」
臨公広場のはずれ、ワープポータル詠唱前に軽い自己紹介をした。
バードか鳥かどっちなんだ、そもそも語呂が悪くて呼びづらい。
口にはしないがやさぐれの暗い目がそう語っている。
「・・・私はコルトレール・ミュージック。ながいのでコルトと呼んでください」
小さく高い声に、とたん、紳士の顔が青くなる。笑顔のまま。凍りついたというアレがぴったりである。
「そそそそうですか。Coltさんですね。よろしく、よろしく」
「いや、微妙にイントネーションおかしいですよそれ。コルトって韻は踏まないでいいです。その呼ばれ方はあまり好きじゃないのです」
「おおそれは失礼。過去似たような名の君と組んだことがあってね。そのときを思い出してしまったよ。ハ、ハ、ハ・・・」
そう言いながら、ようやく回復してきた顔色をふところから取り出したハンケチでぬぐう。
内々にある確信をいだきながらワープポータルを唱えるやさぐれ。
会ってるな、彼は。
どうか行く先でご対面となりませんように。
ゲフェンへ続く青い光の柱を生成しつつ彼女はそう呟いた。
そして現在、恐れていた事態にはまだ立ち至っていない。
もっとも、紳士言う「似たような名前の君」とやさぐれが脳裏に浮かべる人物は同一だとすれば、彼女は世界中の狩場を観光よろしく巡っている。
ここゲフェンダンジョンにも到来の可能性はないでもない。
考えても詮無いこと、と新たに現れるデビルチにMEの連打で歓待を告げる。
紳士は相変わらず後頭部に赤いモンスターをぶら下げたままの戦いだ。
あれはひょっとしてペットなのだろうか。
ー突然、紳士が顔を上げた。頭のハンターフライを右手ではがし左手で懐にしまう。
「・・・ふむ、場の気配が変わった。コルトさん、そろそろ敵首魁の登場らしいですよ。優雅に一戦、交えてみますかな」
もぞもぞとタンクトップの胸部あたりが不気味にうごめく紳士が不適に笑った。
「ドッペルゲンガー ですか」
まず胸元をどうにかした方がいいと思いながらやさぐれが問う。
「いかにも。どうしますかな? クライアントのご指示を」
右手を胸にあて背後にひき、ふざけた様に優雅なお辞儀をする。
「殲滅」
小さく、しかしきっぱりと告げた。
にやりと口元とヒゲをゆがませる紳士。
では・・・ と気功を発動した。
「ジェントル! 爆裂波動!」
全身みなぎるオーラをまとい、ここに臨戦態勢完了である。
ジェントルシップについてはもはや何も言うまいと、やさぐれも装備を対ボス仕様に変更完了。
背中合わせで広場中央に陣取る2人。
準備は万端、心構えもOK。
ボスを迎えるにあたってこれ以上ないシチュエーション。
そんな中、紳士の予言どおり、ソレは現れた。
広場中央のコンビからすこし外れたがけっぷち。
従者に無限と現れるナイトメア-悪夢-を連れ、ドッペルゲンガーが降り立った。
即座、ME詠唱に入るやさぐれと、彼女の前に立ち敵を迎え撃とうと構える紳士。
タンクトップの胸部は相変わらずもぞもぞと動いており、いまいち緊迫感がない。
紳士からDOPまではおよそ10メートルもあるだろうか。
だが向こうがこちらに気づけば2秒と待たずに間合いを詰めてくるだろう。
そしてー 一匹のナイトメアがこちらに意識を向ける。
「くる」
「きますよ」
それぞれがそれぞれに一言。
内心の恐怖を押し殺し、覚悟を決めたそのとき。
中央のコンビと広場端、がけっぷちにいるどっぺるご一行の間に、赤い火柱が炸裂したのだった。
〜つづく〜
16日目〜やさぐれ臨公〜
時は夜半。
ところはゲフェンダンジョン地下3階。
天気も上々、いつもどおりの暗く澱んだ空気が日陰の荒野を満たしている。
そんなうらびれた日常感を如何なく発揮している地下ではあるが、退魔の魔法-マグヌスエクソシズム-繰るプリースト達の声が一面響き、何気に賑わいだけはある。
なぜか女性プリが多く、声の多くはいわゆる黄色い声というやつだ。
その黄色い声のひとつ、紫髪のプリースト放つMEがデビルチに直撃。
どかどかどかと容赦なく連打される聖なる一撃で小悪魔は一瞬で蒸発した。
光の領域が次第に薄くなり効果が消えると、そこには退魔法では倒せない赤い彗星が3体。
俗に異世界の偉人の名を冠され、そちらの呼び名で呼称されることが多いのだが、正式名称はハンターフライだ。
ホーリーライトの連打では殲滅が追いつかない。
追加でモンスターでも来た日には、辺りを見回しテレポートで逃げるしかない。
ない、のだが。
迫る赤ハエを無視し座り込む美貌の聖職者の隣には、1人のモンクが控えていた。
MEだけでは倒せない敵に抗すべく、プロンテラ南東の臨公広場で募った用心棒。
彼もLv上げの仲間を探していたらしく、交渉はとどこおりなくまとまった。
MEで倒せるのはプリースト。それ以外はモンク、というわけである。
用心棒を標榜するだけあって、かなりの高レベルらしく共闘はできないが、そこら辺は
「かよわき女性を護るのは紳士の本懐たるところですよ」
とのことらしい。
あっさりとハンターフライ3体を退けた彼を暗い目でチラッと見やるやさぐれ。
頭にシルクハットは、まぁいい。効果の割りに手ごろな値段なこの帽子には愛好者が多い。
ただ、少し下って白ヒゲというのはなんなんだろうか。
口にはパイプタバコ、あわせて紳士を気取っているものと推察できる。
だが、だとするとタンクトップがどうにも腑に落ちない。
社交界にはタンクトップ紳士というカテゴリーがあるのだろうか。
そもそもタンクトップなどという装備は聞いたことがない。
はっはっはと笑いながら更に2体現れたハエを殴るタンクトップ紳士。
1体を殴り、1体からは後ろ頭をがじがじとかじられている。
「この人、たのしい・・・」
合いも変わらずダーク漂う目でMEを唱えつつ、いつもよりほんの少しだけ楽しい気分になる。
紳士の本領発揮はまだまだ先だということを、彼女は知らなかった。
ところはゲフェンダンジョン地下3階。
天気も上々、いつもどおりの暗く澱んだ空気が日陰の荒野を満たしている。
そんなうらびれた日常感を如何なく発揮している地下ではあるが、退魔の魔法-マグヌスエクソシズム-繰るプリースト達の声が一面響き、何気に賑わいだけはある。
なぜか女性プリが多く、声の多くはいわゆる黄色い声というやつだ。
その黄色い声のひとつ、紫髪のプリースト放つMEがデビルチに直撃。
どかどかどかと容赦なく連打される聖なる一撃で小悪魔は一瞬で蒸発した。
光の領域が次第に薄くなり効果が消えると、そこには退魔法では倒せない赤い彗星が3体。
俗に異世界の偉人の名を冠され、そちらの呼び名で呼称されることが多いのだが、正式名称はハンターフライだ。
ホーリーライトの連打では殲滅が追いつかない。
追加でモンスターでも来た日には、辺りを見回しテレポートで逃げるしかない。
ない、のだが。
迫る赤ハエを無視し座り込む美貌の聖職者の隣には、1人のモンクが控えていた。
MEだけでは倒せない敵に抗すべく、プロンテラ南東の臨公広場で募った用心棒。
彼もLv上げの仲間を探していたらしく、交渉はとどこおりなくまとまった。
MEで倒せるのはプリースト。それ以外はモンク、というわけである。
用心棒を標榜するだけあって、かなりの高レベルらしく共闘はできないが、そこら辺は
「かよわき女性を護るのは紳士の本懐たるところですよ」
とのことらしい。
あっさりとハンターフライ3体を退けた彼を暗い目でチラッと見やるやさぐれ。
頭にシルクハットは、まぁいい。効果の割りに手ごろな値段なこの帽子には愛好者が多い。
ただ、少し下って白ヒゲというのはなんなんだろうか。
口にはパイプタバコ、あわせて紳士を気取っているものと推察できる。
だが、だとするとタンクトップがどうにも腑に落ちない。
社交界にはタンクトップ紳士というカテゴリーがあるのだろうか。
そもそもタンクトップなどという装備は聞いたことがない。
はっはっはと笑いながら更に2体現れたハエを殴るタンクトップ紳士。
1体を殴り、1体からは後ろ頭をがじがじとかじられている。
「この人、たのしい・・・」
合いも変わらずダーク漂う目でMEを唱えつつ、いつもよりほんの少しだけ楽しい気分になる。
紳士の本領発揮はまだまだ先だということを、彼女は知らなかった。
15日目〜やさぐれ支援〜
見上げるほどに高い天井。
その割には広さはそれほどでもなく、ピアノと簡素な本棚、祭壇だけである程度の空間は埋まってしまう。
祭壇を見守るように十字架がそびえ、そのクロスの背にたつ七色のステンドグラスが淡く照らしている。
その部屋、プロンテラの礼拝堂を満たす空気は静寂と静謐が合一し、信心の場にふさわしい雰囲気をもたらしていた。
筋金入りの無宗教者でなければ、この部屋に入ったとたんに今まで歩いてきた雑多な町との隔世を感じることだろう。
年季を醸す建物の古い香りさえも、信仰への一助を担っているかのようだ。
そんな静止した空間に、いま1人のアコライトが入室してきた。
目を閉じ瞑想していた神父が扉の閉まる音に気づき、クロスから後ろに振り返る。
そして息を呑んだ。
紫の髪色はまっすぐに腰の辺りまでおりている。
伏見がちに顔は下げられ、目の辺りは前髪にかくれてよく見えない。
が、はな筋は細くとおり、薄く小さいピンクの唇へつづいている。
女性にしては背が高い方だろう、細く長い足を優雅に動かし、神父立つ祭壇までゆったりとした足並で近づいてくる。
煩悩をすて神の子となった彼ですら、一瞬目を奪われるほどの美貌。
今はアコライト用の礼服を着て化粧の気もないが、それなりの格好でパーティーにでも紛れ込めば、誰もが高貴な生まれを思い浮かべる。
少なくともダンスの相手に困ることはないだろう。
祭壇前まで来た彼女が顔を上げる。
同時に今までかくれていた瞳が神父の視線をむかえた。
大きく切れ長の瞳の色も髪と同じ、深い紫の色を映す。
やはり美しい、と思ったのもつかの間。
・・・彼女の目は沈み、澱み、死の気配濃厚であった。
この世になにも楽しいことなんかない。
あぁ毎日つまらない。
息をするのも面倒くさい。
そんな黒いオーラが双肩から立ち上がり、ゆらゆらと揺れているかのようだ。
主よ・・・
神父は知らず、我が神に呟いたのだった。
その割には広さはそれほどでもなく、ピアノと簡素な本棚、祭壇だけである程度の空間は埋まってしまう。
祭壇を見守るように十字架がそびえ、そのクロスの背にたつ七色のステンドグラスが淡く照らしている。
その部屋、プロンテラの礼拝堂を満たす空気は静寂と静謐が合一し、信心の場にふさわしい雰囲気をもたらしていた。
筋金入りの無宗教者でなければ、この部屋に入ったとたんに今まで歩いてきた雑多な町との隔世を感じることだろう。
年季を醸す建物の古い香りさえも、信仰への一助を担っているかのようだ。
そんな静止した空間に、いま1人のアコライトが入室してきた。
目を閉じ瞑想していた神父が扉の閉まる音に気づき、クロスから後ろに振り返る。
そして息を呑んだ。
紫の髪色はまっすぐに腰の辺りまでおりている。
伏見がちに顔は下げられ、目の辺りは前髪にかくれてよく見えない。
が、はな筋は細くとおり、薄く小さいピンクの唇へつづいている。
女性にしては背が高い方だろう、細く長い足を優雅に動かし、神父立つ祭壇までゆったりとした足並で近づいてくる。
煩悩をすて神の子となった彼ですら、一瞬目を奪われるほどの美貌。
今はアコライト用の礼服を着て化粧の気もないが、それなりの格好でパーティーにでも紛れ込めば、誰もが高貴な生まれを思い浮かべる。
少なくともダンスの相手に困ることはないだろう。
祭壇前まで来た彼女が顔を上げる。
同時に今までかくれていた瞳が神父の視線をむかえた。
大きく切れ長の瞳の色も髪と同じ、深い紫の色を映す。
やはり美しい、と思ったのもつかの間。
・・・彼女の目は沈み、澱み、死の気配濃厚であった。
この世になにも楽しいことなんかない。
あぁ毎日つまらない。
息をするのも面倒くさい。
そんな黒いオーラが双肩から立ち上がり、ゆらゆらと揺れているかのようだ。
主よ・・・
神父は知らず、我が神に呟いたのだった。
14日目〜愉快な聖職者 影〜
午後の部、開始早々のことだった。
最初に違和感を感じたのは、波打ち際に馬の手綱が落ちているのを見たとき。
その次の違和感は砂に半分埋もれた錆びたネジを見たとき。
違和感が最大級になったのが、今。
ビーチにいるはずもない一旦木綿が、一次職PTに襲い掛かっていた。
突然の襲来に指揮系統が機能していない。
最初にアコライトの男の子が倒れ、魔法使いの女の子も間を置かずに打ち倒された。
残る剣士さんとシーフさんも時間の問題だろう。
数10メートルかなたの光景に慌て、救助に向うわたしとアルさん。
向いながらも、辺りに警戒を怠らない。
何か、おかしい。
街中で古木の枝を使ったテロなら何度か遭遇したことがある。
だが狩場、しかもビーチでそれに遭ったことなんて今まで一度もない。
目的なんて最初っからない、ただの愉快犯なんだろうか。
答えが見つからないまま、必死にバッシュを連打する剣士さんと敵の間に割ってはいる。
シーフの子は・・・ 間に合わなかった、倒れている。
彼らの処置はアルさんに任せて、とりあえずコイツなんとかしないと。
気功5個の本気モードで対峙する。
交戦開始。
ふわふら とつかみ所のない敵を殴りながら、私は、新手の出現をどこかで確信していた。
最初に違和感を感じたのは、波打ち際に馬の手綱が落ちているのを見たとき。
その次の違和感は砂に半分埋もれた錆びたネジを見たとき。
違和感が最大級になったのが、今。
ビーチにいるはずもない一旦木綿が、一次職PTに襲い掛かっていた。
突然の襲来に指揮系統が機能していない。
最初にアコライトの男の子が倒れ、魔法使いの女の子も間を置かずに打ち倒された。
残る剣士さんとシーフさんも時間の問題だろう。
数10メートルかなたの光景に慌て、救助に向うわたしとアルさん。
向いながらも、辺りに警戒を怠らない。
何か、おかしい。
街中で古木の枝を使ったテロなら何度か遭遇したことがある。
だが狩場、しかもビーチでそれに遭ったことなんて今まで一度もない。
目的なんて最初っからない、ただの愉快犯なんだろうか。
答えが見つからないまま、必死にバッシュを連打する剣士さんと敵の間に割ってはいる。
シーフの子は・・・ 間に合わなかった、倒れている。
彼らの処置はアルさんに任せて、とりあえずコイツなんとかしないと。
気功5個の本気モードで対峙する。
交戦開始。
ふわふら とつかみ所のない敵を殴りながら、私は、新手の出現をどこかで確信していた。


